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これは夢である、もしくは走馬灯である。
その可能性は未だルルーシュの中で大きな割合を占めた(というか現実的に考えてそれしかないとも思っている)可能性だったが、大人しく殺されてやる気にはとてもではないがなれず。
自分の持つ武器について、ゆっくりと記憶を整理した。




夢中天 3



「答えろ」

高慢に言い放つ女の声に、以前は機械越しの命令は届かなかったことを脳裏で確認する。
しかし以前と今では状況が違う。ギアスは強化され…そしてルルーシュは夢を見ている(と思っている)
それ故、彼は実験の意味も込めて瞳の魔力を使ってみる気になった。
が。


(発動、しない!?)


「何をしている…答えろ、すぐにだ!」


ヴィレッタの急いた声などどうでもよかった。以前この急場を凌いだ武器が発動の兆しを見せないとなれば、
この場でもう一度撃ち殺される可能性すらある。
それは死にかけの夢にしてはあまりに趣味が悪かった。すでに一度親衛隊の隊長に射殺されているのだから、冗談じゃない展開ともいえる。


「答えないつもりか。ならば良い、答えは要らん」


大人しく死ね、と続く女の声を聞きながら、これは誰の嫌がらせだと思ってみたが心当たりが多すぎる。
この場を切り抜ける対策を何一つ考えるでもなくブラックリストを捲っているあたり自分が混乱していることは分かっていたが、現状ルルーシュに他にできることがあるはずもなく。
向けられる銃口に、それでも強い恐怖を感じて、口を衝いて出たのは悲鳴に近い命令だった。


「っやめろ!」






衝撃を予想して強張らせた体に、いつまでたってもその結果は与えられなかった。
ガチャン、と耳障りな金属音がして目を向ける。
そこには、今まさにルルーシュに三度目の死を与えようとしていたナイトメアが無様にうずくまっていた。
膝を着いた状態から性急にハッチが開き、恐怖に慄いた女が無様に這いずり出てくる。
まともに立つこともできないままの彼女は、まろびながら廃墟の傍らに逃げ込み自らの膝を抱いた。


「止めて、嫌だ…殺さないで、歯向かいません。約束します。お願い来ないで!」


頑なに現実を見ようとしない瞳、強張ったまま震える体。
それはかつて枢木スザクが灰色の魔女・C.C.にショックイメージを与えられたときと同じ状態だった。


「何だ、これは…。
何が起こっている…?」


呆然と呟くルルーシュの耳に、また破壊音が響く。
その瞬間、ルルーシュの脳裏にふと閃くものがあった。


「まさか…」


それは只の仮定にすぎなかった。しかも走馬灯や夢を見ているという可能性に比べれば大変に低い仮説だった。
しかしここはシンジュクで、以前ここにいた男に今回は撃ち殺され、以前ここに来た女は今暗がりで震えている。
ならば。
以前ここにいて前回自分が助けたはずの少女は、今?

それは仮説に過ぎない。十分わかっていて、それでも。


「待っていろ、カレン…。
いま、今助けに行く…!」


それでもカレンはルルーシュにとって大切な人だった。















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*全くもって必要ない補足*
ヴィレッタの過去は捏造であります。
貧民街出身なら何かそれっぽい過去くらいあるでしょう、と。
大変失礼しました。









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